静岡県のお茶について

茶の生育にとって必要とされる温暖な気候と適度な降雨に恵まれた静岡県は、茶の栽培面積、生葉収穫量、荒茶生産量共に全国シェアの約40%を占める日本有数の茶産地です。その歴史は古く、鎌倉時代、聖一国師が当時の中国、宋より茶の種を持ち帰り、静岡市足久保に植えたのが静岡県における茶栽培の始まりと言い伝えられていますが、幕末に徳川藩士が牧之原茶園を開墾し、今日のような日本一の茶産地に成長すると、明治期には茶を輸出するまでに発展しました。また、静岡県の栽培品種の90%を占めるやぶきた種は、1908年(明治41年)に杉山彦三郎によって発見されました。

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「深蒸し茶」と「普通煎茶」

今日では、緑茶と言えば「深蒸し茶」と言われるほどに普及していますが、本来は、煎茶道でも使われる「普通煎茶」、つまり、蒸しが浅いお茶が愛飲されていました。「深蒸し茶」と「普通煎茶」には大きく次のような特徴があります。

深蒸し茶」

「深蒸し茶」は摘み取った生葉を60秒~180秒ほど時間を掛けて蒸すのが特徴です。このため、針のような「普通煎茶」の形状とは異なり、見た目の美しさはありません。但し、時間を掛けて蒸すため、抽出したお茶は新緑のような鮮やかな深緑の水色です。渋味も少なく甘くコクもあります。また、深蒸しにすることにより、茶葉はこなれてしましますが、本来、茶葉に残ってしまうβカロテンやビタミンEやクロロファイル等の成分が溶出されます。これらの成分は、抗酸化作用や血行促進作用、免疫機能の改善などに効果があります。

普通煎茶」

「普通煎茶」は蒸し時間が短く、30秒~60秒で生葉を蒸して作ります。煎茶道においては、「普通煎茶」が使われています。「深蒸し茶」に比べて、茶葉の形状は美しく芸術品と言えます。抽出した緑茶は澄んだ緑黄色をしていて、緑茶本来の香りと渋味もあり、すっきりとした味わいが特徴です。


お茶の種類

 緑茶

日本の緑茶は、蒸すことにより発酵を止める「不発酵茶」です。中国でも同様に緑茶を作っていますが、「釜炒り茶」と言い、炒ることにより発酵を止めて作ります。日本でも釜で炒って発酵を止める釜炒り茶が九州の佐賀県・熊本県・宮崎県で作られています。

 

 烏龍茶

烏龍茶は製造工程の途中で発酵を止めて作ります。このため「半発酵茶」と言われています。製造工程のどの段階で発酵を止めるかにより、緑茶に近い色から紅茶に近い色まで、何百種類もの烏龍茶ができ、様々な香りや味を楽しめます。

 

 紅茶

紅茶は生葉を萎凋させ酸化発酵させて作ります。このため「完全発酵茶」と言われています。十分発酵させることにより、緑茶や烏龍茶と異なり水色も濃い茶色になります。「紅茶」の語源は、紅茶のもつ独特の水色からと言われています。

 

 抹茶

収穫する一ヶ月前に茶樹に寒冷紗をかけて日光を遮って育てることにより、うま味成分であるテアニンをたっぷり含んだ新芽が収穫できます。この新芽を蒸して乾燥させ、茎や葉脈を取り除いた状態の茶葉を「てん茶」といいます。抹茶はこの「てん茶」を石臼で挽いて作ったものです。日本の伝統文化である茶道には抹茶が使われます。静岡県の抹茶は、京都の宇治茶、福岡の八女茶に並ぶ日本三大産地のひとつに数えられています。               

 


 

静岡県は日本の中央に位置し太平洋に面し、東西に長く160キロメートルほどあります。このため茶産地ごとのブランドが確立されているのが特徴です。寒暖の激しい山間地や初春、積雪の残る山麓、比較的寒暖の差がない平野部や沿岸部など、それぞれ工夫を凝らした栽培方法が行われています。

 

(1)天竜・森・春野茶産地 ・・・ 静岡県西部、太田川上流域、天竜川上流域を中心に、古くから高級茶の産地として知られています。山間地のため寒暖差も大きく、霧も発生し害虫の発生が少なくお茶の栽培に適した産地となっています。爽やかな香気とスッキリした味わいがあり、甘みと渋みの調和のとれたお茶を栽培しています。

(2)川根茶産地 ・・・ 静岡県中部の大井川上流域の山間地斜面に広がる地域で栽培されているお茶です。さわやかさと渋みも味わえるバランスのとれた味わいが特徴です。古くから銘茶の産地として、全国にその名を知られています。

(3)磐田・袋井・掛川・菊川茶産地 ・・・ 豊かな水と肥沃な土壌に恵まれた静岡県の中でも特に温暖な地域で生産されたお茶で、濃厚でまろやかな甘みが特徴です。深蒸し茶の産地として知られています。

(4)牧之原茶産地 ・・ 牧之原は広大な茶園がつづき、わが国最大の茶産地となっています。太陽の光が牧之原大地に降り注ぎ、甘くまろやかな味わいの深蒸し茶が栽培されています。また、国立・県立の茶業試験場があります。富士山静岡空港にも至便の地区です。

(5)
藤枝・島田・岡部茶産地 ・・ 瀬戸川や葉梨川、朝比奈川などの清流がつくった山間の土地は、水はけが良く昼夜の寒暖差が大きいため、香り豊かなお茶が育っています。特に朝比奈川上流は京都の宇治茶、福岡の八女茶に並ぶ日本三大玉露の茶産地として知られています。

(6)本山茶産地 ・・ 静岡県の茶産地の中で最も古い歴史を持っています。静岡県中部を流れる安倍川上流域で生産されたお茶です。朝夕の川に立ちこめる霧がお茶本来のもっているさわやかな味を引き出します。

7)清水・庵原茶産地  ・・・ 日本平や興津川流域を中心とした茶産地で、山間斜面に茶園が広がっています。清水地区で栽培されているお茶は、うま味があり爽やかな香りのあるお茶が作られています。庵原地区で栽培されたお茶は香りが強くさわやかな渋みのあるのが特徴です。

8)富士・沼津茶産地  ・・・ 富士山西南の裾野地区、愛鷹山山麓に栽培面積が多く、渋みと甘みのバランスが取れたお茶です。富士山の火山灰土に植えられた茶樹にはミネラルがたっぷり含まれ爽快な味わいが特徴です。

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